おとぎばなしのコーナー

愛と勇気と夢
love ,caurage ,dream


@ 暗闇の数時間

A お菓子と緑の国

B 少女との出逢い

C 星空と二人

D 残ったペンダント



、それは すばらしいもの、
地上に あなたがいる限り、
愛は 滅びはしない。

勇気、それは 尊いもの、
地上に あなたがいる限り、
すてては いけないもの、

、それは 素敵なもの、
地上に あなたがいる限り、
いつまでも 持ち続けたいもの。


@、暗闇の数時間


春のある日、ニックは町からすこし離れた、そして 少し険しい森を散歩していました。
何時もそうする様に---------
でも その日は 特に天気が悪くて、真っ黒な雲が、一面の空を 覆って、
あたりは 真っ暗になってしまいました。
周りの見えなくなった森は すごく恐ろしいものです。
ニックは 勇気ある少年でしたけれど、その日だけはやっぱり 怖くなりました。
でもニックは、落ち着いて考えました、これから雨が降ってくるだろう、
そしたら、雨から逃げる所を 探さなければ、と
ニックは ほとんど手探りで 注意深く歩きました。
ニックの予想通り 雨が降ってきましたが、そんなに強くはありませんでした。
突然、稲妻があたりを照らしだしました。
ニックは その稲妻の光の中で、彼の左側の方の山に、洞窟の様なものを見つけました。
ニックは急いで、その洞窟の様なものの方に向かって、かけだしました。
ニックの思った通り それはやっぱり洞窟でした。
ニックは、洞窟の中の岩に腰を下ろし、外の様子を見つめていました。
雷鳴が洞窟の中に響き渡り、稲妻は相変わらず、周りを照らしだしたり、
また隠したりしています。
雨は、激しくなるばかりでした。
ニックはあまりのこわさに目つぶってしまいました。−−−−−−−−

それから幾時間たったでしょうーーーーーーーーー
ニックは外に眼をやりました。
雨は全然衰えを見せない様子です。
洞窟の中の土は、雨にどんどん押し流され始めていました。
ニックは洞窟の奥に眼をやりましたが、真っ暗でただ雷鳴だけを こだまさせています。
そのこだまから、ニックは奥行きがあるな と思いました。
そんな事を考えているうちに、入り口の上の土が、崩れ始めました。
〔外に逃げなければ危ない〕そうニックは思いました。
でも その時はもう外に出られないくらいに 土が落ちてきました。
ニックが居る所も危なくなりそうです。
ニックは仕方なく 後戻りしました。
そうして とうとう入り口は全部閉ざされてしまいました。
奥は真っ暗で何も見えません。
でも もう彼に残された道は唯一つ、
勇気を出して その暗闇に向かって行く、それしかないのです。
そして出口を みつけなくてはなりません。
その時 ニックはポケットに入れておいたマッチの事を思い出しました。
ポケットはさっきの雨で 少し濡れていました。
マッチも半分ぐらい濡れていました。おまけに 軸は5本しかありません。
ニックは心の中でいのりました。どうか火がついてくれますようにって、
指先で 軸の頭を確かめ、そして擦りました。
1回 2回 −−−−−つきません。もう一度、でも濡れてやわらかくなった軸の頭は
崩れて 軸からとれてしまいます。
2本ーーー 3本ーーーー4本ーーーーみんな1本目と同じです。
ニックは最後の1本を擦る前に考えました。
この1本もやっぱり同じ事になるだろう、そうだ乾くまでまとう、−−−−−−
そして濡れなかった、自分のシャツの胸のポケットに1本の軸と マッチ箱をしまいました。
ニックは、そこから動こうとはしませんでした。
何にも見えない洞窟の中を歩き回っても 唯 危険なだけで、
何にもならない事を知っていたからです。
ニックは 怖くて仕方がありません。あの暗闇から大きな熊でも出て来はしないか、
映画で見た、怪獣でも出てきたらーーーーーーーーー
そんな事を考えたら、増す増す、怖くなって来ました。
でも いつか父さんの言っていた事を思い出しました。
【男はひとりで居るときに どれだけ落ち着いているかって事で、勇気があるかどうか
解るんだ】父さんのその言葉は、彼を勇気づけました。

暗闇に慣れてきた、ニックの眼には ほんのちょっぴり周りが見えてきました。
そして 彼の立っている足元に短い雑草がはえているのが 足の感覚で解りました。
ニックは その雑草の上に腰をおろして しばらくは これからどうしようか 考えていました。
春の土は 冷たく彼の体を支えました。でもさっきからの緊張で大分疲れたせいか、
眠くなるのをニックは感じました。
外の雷鳴は聞こえなくなり、ニックの頭の中の怖さや寂しさ
 いろんなものは みんなぼやけて、
そして まぶたは、上からおされてる様に重く下がってきました。
手足からは 力が抜けて、とうとう眠りがニックを 包んでしまいました。


ニックが この洞窟に逃げ込んで何時間たったでしょう。
ニックは眼を覚ましました。
ニックの周りには、彼のいつもの寝起きにあるような、機嫌の悪さが彼を包んでいました。
最初ニックは、彼が何故こんな暗い所に居るのか、解らずに居ました。
スラックスのすその方が濡れているのを感じ、それで、雷鳴に追われて 
この暗闇に居る事を思い出しました。
ニックは自分の ほほをつねってみました、(痛い)って大声で 叫びました。
その声は洞窟の中にワーンと響きました。

やっぱり ニックは生きているんです。彼はそれを宇宙の神に感謝しました。
そして 改めてあたりを注意深く見回しました。
そしたら 寝る前には見えなかった、1条の光が、ニックの居る右後ろのほうから、
右前の斜めになった 岩壁にひとつの ごく小さな点を作っています。
ニックは 一瞬しめた、と思いました。この光の発する所には 
必ず地上がある。だからこの光線を 追って行けば地上に出られる、そう思ったのです。
での その光は 洞窟の中を全部見通せるほどの 強い光ではありません。
だから 途中どんな危険が 彼を待っているか、全く解りません。
ニックは あと1本残っている、マッチの軸にもう一度祈りました。
今度 失敗したら、彼にとって、すごく危険なことです。
ニックは 胸のポケットから マッチを 取り出しました。
あまり よく乾いてない様子です。
彼は ゆっくり立ち上がり、火がついたら、辺りの状況を、
瞳に焼き付けるんだって、自分に 言い聞かせました
細い光線の 横切っている方向に向かって、マッチを擦りました、−−しかしーつきません。
このマッチも 前の4本の軸と同じ様に、頭が崩れるのだろうか、そう考えたらニックの
小さな胸は締め付けられました。
でも ニックは勇気を出してもう一度 マッチを擦りました。
”バチ” 鈍い音がして マッチの頭がひかりました、消えそうな小さな炎です。
ニックは慌てて軸の頭を 下に向けました。そしたら 
小さな炎が だんだん大きくなって来ました。
それと 一緒に ニックの心の中の希望も だんだん大きくなって来ました。
ニックの前方には 濡れた岩壁がありました。
こげ茶色に 見るからに 不気味に光っています。
そして その岩壁は 左右の奥につながっていました。
ここは 三つ又の丁度真ん中らしい、そうニックは思いました。
そして 光は 彼の右側の奥から来ています。
幸せな事に 足場は平らな様です。でも 所所に岩が出っ張っています。
岩だけ気をつければいい、ニックはそう思いました。
そう思ったとたん 彼の右手の指を焦がした、炎は静かに燃え尽きました。
ニックの右手の親指と人差し指には、水ぶくれが できました。
彼は、その2本の指を、そっと自分の口に持っていき、しばらく熱をさましました。−−−
次にニックは、洞窟の右の奥の光を頼りに 手探りで 少しずつ歩き始めました。
でも そのニックの格好は 人間が歩くって言うより、まるで動物が歩いている様でした。
その光の出ている場所は 割りに近い所にありました。
そしてニックは そこに着くまでに 手触りで4っの岩を感じました。
ニックは 丁度 眼の高さぐらいにある、その光の源をじっと 見つめました。
やっぱり 地上からの光のようです。
でもニックの逃げ込んだ、洞窟のある山は、高くそびえていて、こんな所にすぐ地上が
ある訳はない、と彼は思いました。
でも 現に、光が射し込んでいるんです。
ニックは 勇気を出して、その光の源のある辺りを 触ってみました。
すると、濡れた岩壁とは違う やわらかい土の肌ざわりなんです。
ニックは思い切って 掘って見ようと、力を入れて その土を押してみました。
そのとたん バラバラーーバラバラーーーーーー。
ニックの顔から頭にかけて、土が落ちてきました。
彼は下を向いて その場にうつ伏せになりました。−−−−

しばらくして 顔を上げてみたら ニックの頭の上には まぶしいくらいの
青い碧空があったんです。
その時のうれしさと 言ったら、ニックが中学校の入試に受かった時以上のものでした
でも ここからどうやって 抜け出すかが 問題です。
中学校で ニックは、いつも体育が いやでいやで仕方がありませんでした。
だから ここから抜け出すのは、彼にとっては 大変な事です。
でも 碧空が、ニックをよんでいます。
ニックは頭の上の 碧空の切れ目にそっと手をやりました。

背伸びをして、やっと 届くくらいの所にある 碧空の切れ目の手触りは、
やっぱり 何かの草のある感じです。
ニックは、崩れないかどうか、確かめると、中学校では、いつも1回もあがれなかった、
懸垂を使って、上に出ようとかんがえたのです。
グッと力を入れると、いつもやめてしまう所までは あがりました。ここで止めたらーー
そう自分に 言い聞かせながら、彼は碧空を見ました。
そしたら 碧空がほらほらって 言っているような気がして、勇気が湧いてきました。
そして もうひと踏ん張り力を入れました。
その後は 軽くあがった様です。
やれば 出来るんだ そう思いました。

       A お菓子と緑の国


ニックの這い出した地上には、広い大きな野原が 続いていました。
どこの山だかわからない山々が見えました、すごく大きな山々です。
ニックが 山々と反対のほうを見ると、フランスにある凱旋門の10倍も20倍もある様な、
大きな凱旋門がすぐ目の前に見えました。
ニックは自分の眼を疑いましたが、おそる おそる その凱旋門の傍によってみました。
そして 柱にさわってみたら、クッキーの様な感じです。
そして クッキーの様な香りもしているんです。
ニックは 試しに柱をかじってみました。やっぱりクッキーです。
その凱旋門は、全部クッキーで出来ている様です。
上の方には、雨のために溶けない様にしてあるのか
、薄い透き通ったビニールの様な物がありました。驚いた事に、
その凱旋門には、階段がついていて、ちゃんと 中に入れるようになっているんです。
中には、たくさんの部屋が、あるみたいですけど、いくつあるかニックには解りません。
ニックはゆっくり、一番最初の部屋に入ってみました。
でも人の気配は全然ありません。
でもその部屋には、キチンとやっぱりクッキーで出来たテーブルがあって、
その上に、クッキーが食べやすい様に置いてありました。
ニックには、朝食を食べてから何時間たったか解りません。
でも、もうれつにお腹がすいていました。
だからニックにとって、このクッキーが食べても大丈夫な物か、考えるひまなんてありません。
そう思うより先に手がでていました。
もう夢中で食べ続けました。
テーブルの上のクッキーを、ほとんど食べつくしたら、どうにかニックのお腹は
満足した様です。
でもクッキーは、まだまだ周りに沢山あります。
それだけ食べたら、さすがのニックもクッキーの匂いを嗅ぐのも、嫌になりました。
ニックは、また あがって来た階段をおりました。
凱旋門の下に出ると、ニックは、もう一度 回りの景色を良くみました。
どう見ても見覚えのない景色なんです。
もう 僕は、家に帰れないのだろうか。
父さん、母さん、妹にも逢えなくなるのだろうか。ーーーーーーーーーーー
そう思ったら ニックはとても悲しくなりました。
そして、彼の眼からは、涙が遠慮なしに、どんどん流れてきました。
ニックは、もう大声で泣き出しました。
泣いて泣いて何分ぐらいたったでしょう、
ニックの眼からは、もう涙も出なくなって、喉がひりひりしてきました。
大声出して泣いたら、ニックは、なぜかスッキリした様な気がしました。
その時、又、父さんの言葉を思い出しました。
【男は、一人で居る時に、どれだけ落ち着いているかって事で、
勇気があるかどうか解るんだ。】
そして、ニックは、これから どうしようか、と考えはじめました。
なにしろ、この国に、人が居るかどうか、人を探してみようと、ニックは考えました。

そして、凱旋門を抜け、歩きはじめました。
凱旋門を過ぎて、一面の芝生を抜けると、素敵なお花畑がありました。
ここには、季節なんてないようです。
だって、どんな花でも、一緒にここに咲いています。
チューリップも、百合も、菊も、ヒマワリも、コスモスも、みんな一緒に、仲良く咲いています。
そして それらの花は、ニックの国では、見られないほど、綺麗な色をしていました。
その すぐそばに、小さな小川が流れていました。
ところが、それは、オレンジ色の水の小川でした。
ニックは、さっき大声で泣いたので、喉がずいぶん渇いていました。
何か 飲みたいのです。でも この水はオレンジ色をしているけれども、
毒水なのか、オレンジジュースなんだか、さっぱり解りません。でも、そのオレンジ色は、
濁っていなくて、たても澄んでいました。
すこしぐらい、なめても死にはしないだろう、そうニックは思いました。
ニックは右手を、その小川にひたし、そしてなめてみたら、やっぱりオレンジジュースなんです。
本当にこれは、夢じゃないんだろうかと、そう思うばかりです。
ここでもニックは、お腹一杯ジュースを飲みました。
小川を越え、少し行くと、大きな庭園がありました。丁度、どこかの国のお城の庭の様な、−−
−−−−
庭の真ん中には、大きな噴水があって、沢山の水がどんどん出ていました。
そして、庭園の中の、綺麗に刈ってある芝の上には、リスとか野ねずみが、飛び回っています。
その、動物たちは、ニックが行っても 逃げないで、寄ってきて、嬉しそうに、
頬ずりをしてくるんです。
その庭の正面に、まあるい建物がありました。普通では お城のある所です。
ニックは思いました。丸いお城か、−−−−−−−
そして ここの入り口も、凱旋門の時の様な風になっていました。
驚いた事に、この丸い建物も、全体を見るとやっぱりデコレーションケーキの様です。
ニックは、柱に触ってもました、スポンジの様な肌さわりです。
これは、カステラだな、と、ニックは思いました。
そして、茶色の壁は、チョコレートでした。
ニックは、もうおどろき通しです。
部屋の中に、ゆっくり足を踏み入れました。中には、凱旋門の時の様に、
テーブルがありました。          
そして窓には、グリーンやピンクやブルーの薄く透き通ったゼリーが、
ガラスの役目をしていました。
ゼリーを通して見た景色は、とっても綺麗です。
ニックは、ここが何処だか知りたくて、一生懸命遠くを見ようとしました。
でも、このゼリーの窓からは、庭とお花畑と凱旋門と大きな山々。
それ以外には、ニックの瞳には、入りませんでした。
ここでも、ニックはちょつぴり寂しくなりました。
これからどうしよう、ニックはそう思いました。そしてあれこれ考えました。
食べる物は心配ない、でも寝る所がない。
ここや、凱旋門は、甘い匂いが強すぎて寝られやしない。
そうだ寝る所を探そう、そう思って、ニックは歩きだしました。
そして、その建物の、階段の上の方に登ってみました。
硬いウエハウスで出来たその階段は、ニックの重みをやっと支えているように、
彼が、上がるごとに、ギイギイと、悲鳴をあげました。
そして、何階に上がったでしよう、ニックは、屋上の様な所にでました。
そこには、16本の、ウエハウスで出来た傘の様なものが、まわるく立っていました。
丁度、デコレーションケーキのふちどりをしてある生クリームの様にーーーーー。
そう16本と言えば、彼の年と同じです。
ニックは思いました。この傘の上にローソクを立てれば、僕のバースデイケーキ
                                       みたいだなって、
それから、屋上の真ん中には、煙突の様な形をした、部屋みたいなのがあります。
それは、オレンジ、グリーン、ブラウン、ピンク、イエロー、いろんな色に分かれたプリンでした。
ニックは、こんなに沢山の色をしたプリンを見るのは、初めてでした。
このケーキの上にも、やっぱり凱旋門の時と同じ様に、
薄く透き通ったビニールの様なものが、ありました。
ニックは、その屋上の、凱旋門の見える方に行って、今来た所を、眺めました。
そしたら、芝生のある庭園は、噴水を中心に、四つの芝生に、分かれていました。
そして、さっき芝生の、はじめにあった、赤いサルビアは、ずーっと四つの
芝生の周りを、囲んでいました。
こんな大きな庭園は、たくさんの人で、手入れをしなければ、いつまでも、
こんなに綺麗なはずはない、そうニックは思いました。
そして、きっと人が居るだろう、と考えました。
でも、そこから見える範囲で、人の気配は全然ありません。
そこから見た凱旋門は、すごく小さく見えました、山々が大きすぎたからです。
ニックは、庭園の右側の丘の上の方に、とんがった塔の様な物の上の方だけをみつけました。
そして、その塔は、お菓子じゃなくて、人の住んでいる家である様にと、そう祈りました。
それから、今度は庭園とは反対側の方に、行って見ました。
緑に茂った林の中から、水色をした池か、湖の入り江らしいものが、のぞいていました。
そして、あとは森とか林ばっかりです。
ほとんど周りの様子を覚えたニックは、さっき上がってきた階段を、下りていきました。
帰りもやっぱり、ウエハウスの階段は悲鳴をあげました。
相変わらず、あたりに人の気配ありません。
下におりたら、さっき見えた塔の様な物は全然見えません。ただ、緑の雑草と色とりどりの、
野の草が咲いている丘だけが見えました。
ニックは、さっき塔が見えた、だいたいの方向に向かって歩き出しました。
その丘の途中にある雑草は、同じ種類の物ばかり、これも、
やっぱり手入れがしてあるのか,とニックは思いました。
その雑草と一緒に咲いている花は、良く見ると野菊でした。
そう丁度にニックの手のひらの、半分くらいの大きさです。
そして、赤、黄、白、ピンク、紫、いろんな色の花が、咲き乱れています。
そして、その香りは、やさしくニックを包みました。
野菊の香りに包まれながら、頂にさしかかった、ニックの眼に、今度こそは、
本物の家らしい家が、飛び込んできました。
そして、その家は、その丘のそう遠くない下の方にありました。
家の近くに、人が居るのも見えました。
でも一人で、小さくなっている様に見えます。
ニックは、急いで、その丘を降りて行きました。

B 少女との出逢い
家のそばに居るのは、ニックと同じ年ぐらいの、少女でした。
少女は、地面にうつぶせて、ただしくしく泣いているだけです。
そして、真新しい、深緑の、大きな箱しだのついたスカートに、薄茶色の、
分厚いセーターを着ていました。
少女の髪は、長く肩のへんまでありました。
少女は、ニックが来たのに、まだ気がつかずに、ただ泣いています。
【こんにちは、お嬢さん】ニックはそう声をかけました。
少女は、びっくりした様に、顔をあげました。
でも、真っ赤に腫上がり、うるんだ瞳の中には、嬉しさがあふれていました。
それでも少女は、泣き止みません。
そして、ただニックの方を見ながら、相変わらず泣きじゃくっているだけです。
ニックは続けて聞きました、【君ここの人?】少女はなんにも言いません。
【君名前は何て言うの?】そうニックは聞きました。
少女は、しばらくだまっていました。
そしてようやく、小さな可愛らしい声で、とぎれとぎれに、【ミ・ー・ナ】そう言いました。
ニックは【ミ・−・ナ?】そう聞き返しました。
そしたら少女は、小さくうなずきました。
ニックはそんな少女の、可愛らしい素振りが、いっぺんで好きになってしまいました。
その気持ちの中には、それまで一人で居た寂しさから逃れて、心強く思う、
そんな気持ちもありました。
ニックは少女に言いました、【もう泣くのはおよし、なにがそんなに悲しいんだい。】
もう、ほとんど泣き止んだミーナは言いました。

【今までここには、私一人しか居なかったの】
【何故こんな所に一人で居るの。】そうニックは言いました。
ミーナは、ピガルス高原に、お父さん、お母さん、妹に弟と彼女の5人で遊びに来て、
途中で雷雨にあって、ミーナだけ、はぐれてしまったって事を、そして、彼女は泣きながら
、やっとここまで来たって事を、途切れ途切れに、でも精一杯に、ニックの眼を見ながら
話しました。
だけど、ニックはピガルス高原なんて、全然知りません。
それに、ミーナは、ここに来るまでの道を、ほとんど覚えていないらしいんです。
太陽の光は傾き、肌寒さが二人の上に降りてきました。
ニックは、寝床を探すために、ミーナの泣いていた所の側にある家に入ってみようと、
そう思いました。
そして、ちょっとテレくさかったけど、ミーナの手を取りました。
【さ、僕についておいで】ニックがそう言うと、ミーナは、恥ずかしそうに、
すこしためらっていましたが、おそるおそる、ニックについて行きました。
ニックは、古めかしい木の扉に着いた、もう錆付いた取っ手を、おそるおそる引きました。
すごく重い扉は、彼が全力を出して、それでやっと半分位あきました。
傾いた弱い陽の光は、その家の奥まで、薄く照らし出しました。
弱い陽の光では、ほとんど、中の様子は解りません。
【ここで待っておいで】ニックはミーナにそう言うと、一人で、
ゆっくりと、中に入って行きました。
そして、最初にニックを、襲ったのは、くもの巣でした。
顔に何本か巻きつきました。でもニックはそんな事には、かまわず
部屋の中を見回しました。
しばらくきょろきょろ、していましたが、やがて、ニックの眼は暗闇になれて、
右の奥に、暖炉らしい物が、そして、その前には、丸い大きなテーブルと、
六つの、椅子があるのが解りました。
暖炉があるのは、ニックが見つけた塔の丁度真下あたるな、と彼は思いました。
そして、ニックの見つけた塔は、煙突だったのです。
でも、ニックはこんな長い、そして風変わりな、煙突は初めてでした。
ニックは、その後ゆっくり、暖炉のそばに近寄りました。
暖炉の上には、1箱のマッチが置いてありました。
そのマッチの箱の、大きかったこと、ニックの学校の教科書ぐらいの大きさは、
ありました。箱の中に入っているマッチの軸も、鉛筆ぐらいはありました。
その割に暖炉や椅子は大きくないんです。
ニックは、まったく、昼間からおどろき通しです。
ニックは、その大きなマッチの軸を箱から取り出し擦ってみました。
【ボォー】って、大きな音をたてて。マッチの軸は、勢い良く燃えました。
何しろ、鉛筆ぐらいもあるもんですから、部屋にランプでも点いた様に、
部屋中が見えました。
暖炉の中には、灰だけが、平らにならされていました。
そして、今すぐにでも、薪を入れて火が点けられる様になっています。
ニックは、マッチを灰の上に投げ、そしてすぐ、外の出ました。
心配そうに待っていたミーナの顔が、ニックを見つけたとたんにほころびました。
ニックもそれを見て、ミーナに微笑みました。
そして【暖炉もあるし、マッチもある、薪を探しに行こう】そうミーナに言うと、
ニックは、ミーナの手を取り、家の周りを、歩いて探して見ました。
そしたら、裏にはちゃんと薪がつんでありました。
ニックは、少しの薪を一番上から取り、そしてミーナに渡しました。
次に、自分は沢山の薪を取り【さー行こう】とミーナに言い、
一緒に表に回ると、もう一度外で待つように、ミーナに言って、
一人で家の中に入って行きました。
持っていた薪を、暖炉の右側に降ろすと、灰の上に、薪のやぐらを作り、
シャツの胸のポケットに、入っていた試験の答案を出して丸め、薪の下に入れました。
それからニックは、あの大きなマッチを擦って火をつけました。
薪は、面白いように燃え始めました。
ニックは火をつけると、すぐに表に戻り、まだ薪をもっているミーナを見て、
【なんだー、薪づーと持ってたの、降ろせばよかったのに、さあ、僕におくれ、】
そう言って、ミーナから薪を受け取り、片手で薪を持つと、
また、ミーナの手を取りました。
今度は、ミーナは、嬉しそうに、ニックの後についていきました。

C 星空と二人
暖炉の火は、赤々と、すごく良く燃えていました。
明るいその炎は、二人にとって、すごく心強く、そして彼らを勇気づけてくれました。
二人は、暖炉の前に座りました。
ニックは、すぐ外の様子を見に行こうと思い、立ちあがりました。
そしたらミーナが【何処に行くの】と、尋ねました。
【うん、ちょっと外の様子を見てくる】と、ニックが言うと、
【怖いわ、ここに居て】そう、ミーナが言いました。
それでも、ニックは【すぐ戻るから ここにおいで】そうミーナに言うと、外にでました。
ニックが、外に出たときには、もう陽はすっかり落ちていて、
見えるのは、黒黒とした丘と、宝石を紺色のお盆に、一杯並べたような星が、
紺色の夜空に散らばっていました。
ニックの町では見られない様な、素敵な星だったので、
彼はいつまでも見ていたいと、思いました。
月も、お盆の中の宝石のひとつの、大きな塊の様に輝き、ニックの影を、長く伸ばしました。
良く晴れ渡っているだけに、外は12月ぐらいの、寒さで、黒いコールテンのジャンパー
だけしか、着ていないニックには、ちょっとこたえました。
その時、ニックはお腹がすいたな、と思いました。
ニックはミーナも、お腹をすかしているだろう、そう、考えました。
そして、家の中に戻ると、【ミーナ、お腹、すいてないかい。】
と、やさしく尋ねました。【うん、すいてる】と、ミーナは、あどけなく答えました。
【それじゃー、ミーナ、僕と一緒に、ケーキの丸いお城に行こう、】
とニックはミーナに言いました。ミーナは、
【なあにそれ、ケーキの丸いお城なんてあるの、?】そう、聞き返しました。
【何でも良いから、僕についておいで、そしたら、おいしいケーキを、沢山食べさせて、
あげるから、】そうニックが言うと、ミーナは、
【うん、一人で居るの怖いから、行くわ、】そう、言いました。
ニックも、そこに、ミーナを、一人残しておきたくありませんでした。
ニックは、大きなマッチ箱を、彼のジャンパーと、お腹の間にいれました。
そして、丸いテーブルに、かけてあった、テーブル掛けを取ると、
【寒いから、これを着るといい、】そう言って、ミーナの、肩から、掛けてあげました。
ニックは、暖炉の火が消えないように、沢山の薪をくべると、また、ミーナの手を取り、
その家を、あとにしました。

丘に登る道は、月に照らされて、良く見えました、しばらく昇って行くうちに、
突然ニックの手の中にあった、ミーナの手が抜けました。
ミーナが、岩につまずいて3mほど、ころげ落ちてしまったのです。
ニックは、急いでミーナの所に行くと、ひざまずいて、彼女を抱き起こしました。
              そして、ミーナの重みが、ニックの右腕にかかった時、            
    初めて、ニックは少女の温かみを、感じたのです。
ニックの瞳は、ミーナの可愛い顔が、月の光に照らされて、
青くなっているのを見ました。
【大丈夫?】ニックは優しく尋ねました。
【うん】ミーナは、小さな声で答えました。
宝石を、ちりばめた様な、沢山の星と、明るい月の照らし出す、青い夜空の下で、
しばらく、二人はそのまま、みつめあっていました。
そして、ニックは、そっとミーナのほほに、くちずけをしてあげました。
ミーナは、嬉しそうに微笑むと、自分の胸に下げていた、
丸いペンダントを、ニックの首にかけ、【ありがとう】そう言いました。
ニックも【ありがとう】そう言いました。
ニックが、こんなしあわせを感じたのは始めてでした。−−−−−−−−−−。



D残ったペンダント
【さあ行こうミーナ、ケーキのお城に】ニックは、そう言うと、ミーナを立たせてあげました。
ニックはミーナにもう一度、テーブルかけを肩から、かけ直してあげました。
そしてさっきの様に、歩き出しました。
いただきには、2.3.分で着きました。
その時ニックは、自分の眼をうたがいました。
昼間あった、丸いケーキのお城や、庭園や、凱旋門が見えないのです。
月の光は、ただ青白く、寂しい野原を照らしているだけです。ーーーーーー
突然、二人の足元の岩がぐらつき、二人は宙に、なげだされました。
ニックは、何がなんだか、解らないうち、ただ、【ミーナ”】そうさけんでいるだけでした。


ニック、ニック。
彼が、眼を開いた時、彼の前には、父さんと、母さんと、妹のアンナが居ました。
ニックは、何にも解らないで、周りを見回しましてみました。
そこは、雷雨に追われて、逃げ込んだ洞窟でした。
周りには、近所の人たちも沢山来ていました。
昨日ニックが、散歩出たまま、帰らないので、みんなが心配して見にきてくれたのです。
ニックは優しい父さん、母さん、アンナの顔を見て、すっかり安心しました。
次の日から、ニックは、元通り、毎日学校に、通っています。
でも、不思議な事がひとつありました。
ニックの胸には、丸いペンダントが下がっていました。
丸いケーキの、お城の形をした。−−−−−−−−−−
その事があってから、ニックは、洞窟のある山の、そばを通ると、
ペンダントを、握り締め、ミーナの事を思い出します。
ミーナの、肩までたれた長い髪とか、小さな可愛い瞳、いろんな事をーーーーーーーend


1967.11.10著作 鈴木基治
2006.7アップロード


星空と二人 (歌詞)
星空のもとで、ニックとミーナは
星空のもとで、見つめあう、
宝石のような、青い星だけが、
そっと、やさしく、二人を包む。

ミーナいつまでも
僕の胸で、
優しく、ほほえんで、いておくれ。

星空のもとで、ニックとミーナは、
星空のもとで、見つめあう。







お菓子と緑の国
大きな門と、お花畑、
オレンジの川に、おおきな、噴水
丸い、大きな、ケーキのお城。

ここは、素敵な、お菓子の国、
それでも、一人じゃ、ちょっぴり、寂しい。
だけど、やっぱり、素敵な国。




ペンダント
君が僕に、残して行った、
たった、ひとつのペンダント、

恋の喜び、教えてくれた、
たった、ひとつのペンダント、

ペンダントを、握り締め、思い出す。
長い髪、可愛い瞳、ウーウーウー


君が、僕に、のこして行った
たった、ひとつにのペンダント






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